皆さま、こんにちは。
トレンドマイクロ ワークショップ運営事務局です。
トレンドマイクロでは、子どもたちや保護者の方に、“安全なICT活用”につながるイベントや情報をお届けしています。
トレンドマイクロ ワークショップ運営事務局が開催する子ども向けのイベントの中や、小学校やプログラミング教室での出張授業の中で、子どもたちとセキュリティやリテラシーについて考えるワークショップを実施しています。
そのワークショップの中では「ソウゾウ力と思いやり」をキーワードに、絶対の正解があるとは限らないデジタルとの付き合い方、上手なデジタルの活用方法を子どもたちが身に付けられるように取り組んでいます。
今回は、この「ソウゾウ力と思いやり」というキーワードについて、開催支援をいただいている、SmileMeさんから見た視点、プログラミング教室でも通じることについて、ご寄稿いただきましたのでご紹介させていただきます。
SmileMeさん、ありがとうございます!
プログラミングを日常に取り入れるには?
前記事では、「プログラミングをどのようにして日常に取り入れるか」をテーマに、プログラミング学習を通して身につけられる力についてご紹介しました。
本記事ではそこからさらに踏み込み、「ソウゾウ力」と「思いやり」をキーワードとして、子どもたちが育むことのできる力についてご紹介していきます。
何かを作り出す「創造力」
プログラミングを学ぶうえで活躍し、また取り組む過程でも育まれていく創造力。
広い意味で捉えるなら、これまでになかった新たなサービスや作品を作り出すことです。
ただ新しい何かとはいっても、0から作り出すものもあれば、既に存在しているものをかけ合わせてつくるものもありますね。
このように、何かを作り出す・生み出す力は、プログラミングに取り組む過程でさらに身についていくと考えられます。
Scratchを例に挙げてみましょう。
0から作り出すものの代表として、キャラクターや背景を自分で描いたり、音楽を自作したり、自分の音声を吹き込んだりする100%オリジナルの作品があります。
一方で、Remix機能を使うことで誰かの作品からインスピレーションが得られ、キャラクターの色やデザインを少し変えてみる、背景を変えてみるなど自分でアレンジを加えて、よりよい作品に仕上げていくことも可能です。
※ScratchにはRemix(=誰かの作品にアレンジを加える)という機能があります。
クリエイターが他者の作品からインスピレーションを得るのは、決してめずらしいことではありません。
他者の作品に影響を受け、自分のアイデアを追加しながら新たな作品を創造していくのです。
つまり、0から作り上げる場合においても、また誰かの作品からアイディアを創出する場合においても、ともに創造力が必要となってくるというわけです。
イマジネーションを働かせる「想像力」
もう一つは、「想像する力」です。
ここでいう想像力とは、誰かを思う気持ちのこと。
過去の記事で取り上げた際にも触れていますが、誰かに悲しい思いや嫌な思いをさせてしまわないための想像力のことです。
日常生活を送るうえでも、誰かの気持ちをしっかりと考えられることは大切ですね。
ただ、人間関係において、目の前にいる誰かの気持ちを想像するのはリアルでも十分難しいですが、オンラインではなおさら難しいことです。
そこで重要になるのが「想像力」です。
目の前にいない相手、もしくは自分の書き込みを読んだ第三者がどのように言葉を受け取りどう解釈するのか、想像力を働かせなければなりません。
文字情報のみのやり取りになるので、なおさら慎重になることでしょう。
そしてもう一つ。
「こうだったらいいなぁ」という子どもたちの無限の想像力にも、自社教室やオンライン授業で立ち会う中でたびたび出会います。
弊社Smile Meでも子どもたちが学ぶコースの中に「スクラッチデザイン」があります。
スクラッチデザインコースでは、子どもたちが思い思いに作品を作り上げており、自分の「好き」を追求するお子さまが多い印象があります。
たとえば、トラックが好きなお子さま。
自分のスマホに保存してある画像をもとに、スクラッチの中で走らせるトラックを作り上げていきます。
窓の形やタイヤのホイールも忠実に再現し、どんどん進めていく集中力は本当に驚くほどです。
トラックのデザインは、彼の作品の中のごく一部に過ぎません。
デザインが終わったら今度は別のトラック、そして背景の作成へと進みます。
自分で作った背景の中に、自分がデザインしたトラックを走らせます。
信号待ちのタイミングを自分で考えてみたり、踏切が音を鳴らして遮断機を下ろす場面を再現してみたり。
さらには、「こんなクラクションの音が鳴ったら楽しいだろうな」「自分の前を通り過ぎるときに鳴らしたい」というように、彼の描くストーリーが完成し、さらにスクラッチの作品の中に落とし込んでいきます。
実際の作品(トラックのデザイン、作品全体)
自分で作り出していく創造力と、「こうだったらいいなぁ」といった想像力が、ともに育まれていくのです。
そして、これはスクラッチデザインに限った話ではなく、日頃の授業においても多々見られます。
ゲームを作成する「スクラッチコース」では、各単元の最後に子どもたちのレベルアップを図るため、ミッションが用意されています。
BGMを加えてゲームに彩りを添えたり、自分でアレンジしたりというように、それぞれがオリジナリティを加えていくのです。
ミッションは初回授業から用意されており、子どもたちが自由な発想で取り組めるよう弊社では意識しています。
ゲームを作る過程で基本的な操作方法を学習し、知識を蓄えていくと、今度は「こうしたい!」という意識が芽生えてきます。
それを大事にしたいと考えています。
「スクラッチコース」のミッション
プログラミングで育まれる「思いやり」
一般的に「思いやり」という言葉を聞いて真っ先に思い浮かぶのは、「誰かに優しくしてあげること」ではないでしょうか。
本記事では、「思いやり」の意味をもう少し深掘りして以下の3点について見ていきます。
- ゲームの難易度設定
- アクティブラーニング
- オリジナルゲーム作成時の工夫
―ゲームの難易度設定
ゲームを作る上でのポイントは、プレイヤーにとっての操作のしやすさはもちろんですが、難易度も重要です。
簡単すぎては楽しくないし、難しすぎても攻略できず、やはりつまらないものとなってしまいかねません。
簡単にクリアできそうに見えて、実はちょっと難しい。さじ加減が非常に大切なのです。
難易度をしっかり考えることも、思いやりだと考えています。
日頃いろいろなゲームをプレイしたことがあっても、難易度に注目した経験は少ないことでしょう。
クリエイター側の立場になって初めて意識する部分かもしれませんね。
しかし、視点が増えることは、より視野を広く持つことができ、まわりへ配慮できるだけの余裕も生まれるのではないでしょうか。
―アクティブラーニング
弊社では、授業で積極的にアクティブラーニングも取り入れています。
「教わる」という完全な受け身ではなく、能動的に取り組めるよう工夫をしています。
たとえば答えを教えるのではなく、ヒントを提示し自ら考えられるように促したり、教室内に困っている子がいたら、友達同士でもヒントやアドバイスを出し合ったり、といった具合です。
「自分の力にしていく」うえでとても大切なことですね。
―オリジナルゲーム作成時の工夫
ゲームを作る場合(オリジナルゲームを作成した場合は特に)、操作方法やゲームの説明も重要なポイントです。
ゲームの魅力は、プレイしてくれる人がいてこそ高まるもの。
ですから、きちんと伝える必要があります。
Scratchの場合、プロジェクトページの「使い方」や「メモとクレジット」の記入欄があります。
ゲームの説明や操作方法、クレジット、ウラ技、海外のユーザーにも伝わるように英語訳を追加するなど、見てくれている誰かへの思いやりの気持ちで工夫してくれています。
Scratchの「使い方」、「メモとクレジット」の記入欄
ソウゾウ力と思いやり
2つのソウゾウ力と思いやりについて深掘りしてきましたが、実際は完全に分かれているわけではなく、それぞれが深く関わり合っています。
ゲームを作るのであればプレイする人を、見るための作品を作るのであれば鑑賞する人を想像し、思いやり、作り上げていきます。
どれか一つの力だけで成り立っているわけではありません。
コミュニケーションも同様ですね。
子どもたちがプログラミングを通して身に付けていく力は、本当にさまざまです。
前記事でまとめた4つの力はもちろん、ソウゾウ力や思いやりのほかにもあるでしょう。
ただし、どの力も子どもたちがこれからを生きていく上で、必要不可欠な力であることは言うまでもありません。
大きな可能性を秘めたプログラミングを、少しずつでもぜひ日常に取り入れてみてくださいね。
いかがでしょうか?
現場でのICTの活用事例に始まり、保護者の皆さまが気になるポイントをギュッとまとめて、全6回にわたってお伝えさせていただきました。
大きな時代の転換期、子どもたちを取り巻く教育環境も大きな変化の中にあります。
今の大人が子どもだった頃とは大きく異なっている現代において、少しでも保護者の皆さまの疑問や不安の解消につながりましたら幸いです。
SmileMe株式会社
小中学生向けプログラミング教室「SMILE TECH」ではリアルでの教室に加え、オンラインでも授業を行っています。
内容もScratch(スクラッチ)やProcessing(プロセッシング)などのプログラミングだけではなく、デザインまで幅広いコースをご用意しております。
詳しくはHPをご覧ください。
https://www.smileme.jp/
※Scratchはマサチューセッツ工科大学の登録商標です。