皆さま、こんにちは。
トレンドマイクロ ワークショップ運営事務局です。
トレンドマイクロでは、子どもたちや保護者の方に、“安全なICT活用”につながるイベントや情報をお届けしています。
今回は、イベント開催支援をいただいている、SmileMeさんより、実際の教育現場でのICT活用事例や、子どもたちの反応などについて、ご寄稿いただきましたのでご紹介させていただきます。
SmileMeさん、ありがとうございます!
教育現場での活用例をご紹介!①
2020年度より小学校でプログラミング教育が導入されたことにより、これまで以上にICT教育という言葉を目にしたり、耳にしたりする機会が増えてきたのではないでしょうか。
ICTでは、これまでのIT(情報技術)に加えコミュニケーション、つまり情報の伝達に重きが置かれています。PCやタブレットが学校教育にも導入されていますが、授業内でそれらを使って情報や技術をうまく活用していくことこそが、ICT教育の核の部分です。
このICTの活用はGIGAスクール構想の中にも掲げられており、『1人1台端末』と学校における高速通信ネットワークの整備が急ピッチに進められてきました。
時代の大きな転換期、子どもたちに求められるのは、「指示されたことに対して正確にこなしていく力」ではなく、「自分で課題を見つけ、仲間と協力して解決する力、そのために必要な情報収集力と分析力」であり、ICTの活用によって、これらの力が新たな価値を作り出すことに繋がっていくと言われています。
ではICTの活用とは、一体どのように展開されているのでしょうか。実際の学校教育での活用事例を、よりイメージしやすいよう2回に分けてお伝えしていきます。
今回は、実際に小学校で行った海洋授業についてご紹介します。
ゴミ問題について考えよう
海のゴミに目を向けると、大きな問題として取り上げられるもののひとつに『プラスチックごみ』が挙げられます。このプラスチックごみ問題、海の生態系を破壊してしまうだけではなく、巡り巡って私たち人間にも大きな影響を与えるとも言われているほど深刻です。今回はセブ島のゴミ問題に着目し、子どもたちがどのような活動をしてきたのかを見ていきましょう。
ゴミ問題、現状は?
まずは、学校の先生と子どもたちによる調べ学習からスタートしました。
セブ島のゴミ処理の現状について、実際にインターネットを使って情報収集していきます。
自分たちが必要としている情報については、さらに分析をしていきました。
- その結果、セブ島のゴミ問題について次のことが分かってきました。
- セブ島では1日600トンものゴミが排出されている
- ダイオキシンの発生を防ぐため、セブ島にはゴミ焼却場がない
- ゴミの分別はリサイクル可能とリサイクル不可能の2種類だけ
- 実際には分別が守られておらず、生ゴミの山が放置されて異臭を放っている
- ゴミのポイ捨ても多く、住環境に悪影響を与えている
- ゴミ山では約600世帯の家族がゴミの分別によって生計を立てている
現状を把握できたところで、今度は解決策について意見を交わし、それぞれがどんどんアイデアを出しあっていきます。
その後は、テクノロジーを活用するなら?という視点でさらに話し合いを重ね、アイデアをカタチにしていきます。
子どもたちから出てきたアイデアは本当にさまざまでした。
なかには大人では思いつかないようなユニークなものも。
たくさんのアイデアから今回、全体で取り上げたのは『ゴミ収集・運搬ロボット』と『分別ロボット』の2つです。
これらをどんなロボットを使って実現していったのか、詳しくご紹介していきます。
使ったロボットはKOOVとOzobot
今回の授業で使ったロボット達をご紹介します。
KOOV(クーブ)とozobot(オゾボット)です。
これらをゴミ収集・運搬ロボットと分別ロボットに見立て、セブ島のゴミ問題の解決法について深めていきます。
―KOOVとは?
KOOV(クーブ)は自分たちで組み立てていくことのできるロボットです。
タイヤのついたモーター部分にブロックのパーツを組み合わせて、それぞれが思い思いの形を作り上げていきました。
たくさんのゴミを一度に集められるようにとアームを大きくしてみたり、多くのゴミを押せるように全体を重たくしてみたり、子どもたちのさまざまなアイデアが光ります。
バランスを崩して動けなくなってしまうこともあるため、サイズや重心に加え機能面も考慮しながら、グループの仲間達と取り組んでいきます。
プログラミングパートでは、4つあるタイヤのうち、どのタイヤをどの方向に回すのか命令を出し、実際にKOOVがプログラミングによって動くようにしていきました。
また、ゴミを集めるアーム部分に赤外線フォトリフレクタを使い、対象物であるゴミの有無とゴミまでの距離を認識します。
ゴミとの距離によってロボットの進む方向を制御できるので、ゴミを集めて回ることができるというわけです。
こうして、各グループで個性的な「ゴミ収集・運搬ロボット」が誕生しました。
KOOV「ゴミ収集・運搬ロボット」(画面中央のタイヤのついた白いロボット)
―Ozobot(オゾボット)とは?
Ozobotはカラーコードでプログラミングする、手のひらサイズのかわいらしいロボットです。
色を認識することのできるOzobotは、黒い太い線(5ミリ程度の線)の上を走ります。
線が交差している場所では、その少し手前の部分で、進んで欲しい方向に曲がるようカラーコードで指示を出します。
こうして思い通りに動くようにプログラミングをしていきました。
今回は「分別ロボット」として活躍してもらうので、ゴミの種類によって進むルートが異なります。
種類に応じたゴミの回収場所に到達できるようにするには、どのようにプログラミングしていくと良いのかを考えながら、子どもたちも試行錯誤を重ねました。
Ozobotが認識できるのは赤・青・緑・黒の4色です。
黒い線の上に他の色のシールを貼り、その色の組み合わせによってプログラミングをしていきます。
大切なのは「色を読み取る順番」です。
同じようにシールを貼っていても、Ozobotがどちらから来るのかによって、その指示内容が変わってしまうからです。
子どもたちは、Ozobotが通るルートについて話し合いながら取り組みました。
ゲートを回収場所に見立て、ゲートの内側には磁石を装着し、そこにOzobotが運搬してきたゴミ(こちらにも磁石をつけておく)がゲートの磁石にピタッとつくよう、工夫を凝らしました。
Ozobot「分別ロボット」(画面中央上部の黒い線上を移動しているロボット)
プログラム通り動くか実証
実証することはとても重要です。
ゴミはちゃんと集められているか、指定の回収場所まで運搬できているか、ムダな動きは多くないか等いくつかのチェック項目を設け、それらをクリアできているかをしっかりと確認していきます。
実際に試してみて、プログラム通りに動くのかどうか、もし動かないのであればどの部分をどう修正する必要があるのかを、グループのメンバーで話し合いながら進めていきました。
最後はディスカッション
ここまでの流れで、子どもたちはセブ島の現状を把握し、問題の解決に向けてたくさん考え、それらを形にしてきました。
総仕上げとして、セブ島がどう生まれ変わるかをディスカッションしていきます。
- ゴミを分別するから、リサイクルしやすくなるんじゃない?
- 捨てられるゴミを効率よくさばけるから、異臭がなくなっていく!
- ゴミ山の周辺の住環境が良くなり、それが島全体に広がっていくと思う!
- 人の代わりにロボットが活躍できるから、そこで働く人の負担が減るね!
- ロボットの活躍で、スカベンジャーの人たちの生活が変わるんじゃないかな。
スカベンジャーとは、ゴミ山で生活している人々のことです。
ゴミの中からまだ使えそうなものを分別して業者に売り、わずかな収入を得ています。
実はセブ島のゴミ問題について調べるなかで、子どもたちは貧困問題が存在している事実をも知りました。
そこからもっと視野を広げて学んでいくこともできそうです。
授業風景
授業の発表内容
それぞれの考えやアイデアを出し合い、仲間の考えも受け入れることもできるし。〇か×か、というたった2つの軸で物事を見るのではなく、いろいろな方向から見つめ、考えることができます。